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2017年4月15日土曜日

「入間川讃歌」(仏子・野田地区)自由詩


 河原や土手道の朝は早い

 五時に野鳩が土をつつき

 五時半にムクドリの編隊が舞い降り

 東京湾の鵜も二、三羽でやってくる

 六時には犬の散歩やジョッキング

 通勤の人々が土手道を急ぐ

 斜面のゴミを拾う人

 土手の花壇を耕す人もいる

 四季ごとにボランティアの

 草刈り隊もやってくる

 ブーンという小気味よい草刈り音

 自然の営みと善意を乗せて川は下る



 名も知らぬ雑草が春に一斉に咲く

 昨年の種から育ったものもあれば

 川下りした種から育ったものも

 秋には数千の彼岸花が赤さを競う

 遠い時代に流れついた胡桃(くるみ)も

 数本が秋に堅い実を落とす

 だれか撒いたのだろうか

 上橋寄りの岸辺のグランドに

 赤・紫・黄・白のコスモスが何千本も群生

 誰が詠んだのだろうか

 「河原の コスモス少女 包みおり」

 と立札があったこともある


 堤にサクラが咲く頃とゴールデンウイーク

 地元民が入間川を誇りに思う時期
 
   たくさんの行楽客が訪れる
 
   桜のトンネルが三百メートル

 堤の北斜面にも低くまで枝がたれ

 花見客の眼前で花が香る

 ゴールデンウイークの河原には

 赤、緑、黄、水色、白の天幕が二十余も

 そしてバーベキューの人の輪と煙

 昼寝や恋の語らい、水遊びや雑魚釣り

 若やいだ声を聞き明日の鋭気をもらう

 入間川は老若男女の安らぎの川


   入間川は太古や近代の歴史をはぐくんだ川

 スルメのように平たく変形し

黒く炭化したメタセコイヤに出会うことも

 どこかに仏子象の足跡も多数眠っている

 Y字、I字の蛇糞石が川沿いの崖から顔を出す

アナジャコノの巣に鉄分が溜まった太古からの贈り物

昭和前半には繭や織物を乗せ木の車が橋を渡る

3つの水車小屋から米や麦を打つ音が響く

染色工場から出たすすぎ水が川を藍色にした

秩父や青梅の山々は木材の宝庫

西川材で組んだイカダが荒川に向け流れ下る

あちこちの土手や橋げたを壊したとか 



大雨になれば砂と粘土のシルトが

大きな塊となって流れ下の川岸に鎮座する

何年もかけ崩れもとの砂と粘土に返る

シルトのウエーブした岸辺は美しい

文学少女系の古い友人に写真を送ったら

宮沢賢治の小説「イギリス海岸」そっくりと言った

春先は凸凹の褐色で 夏は白

秋にはビロード状の濃い緑

入間川のイギリス海岸を横切る小川は

生活排水を流し込む憎いやつ

だが日々跳ね飛びながら流れる

いたずら坊主のように憎めない可愛いやつ

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