写真① 団地に広い木陰を提供ー幹直径45~55cm
私は東京の杉並に住み、高校時代は五日市街道のケヤキ並木を自転車で越え通学し、大学もまたケヤキ並木の奥に講堂があり、校章はケヤキだった。こんな過去もあり、多くの方と同様にケヤキをこよなく愛する。いまから15年以上前になるが、東京を横断する青梅街道の高円寺近くから別れ五日市に至る五日市街道のケヤキ並木を、バイクに乗り紅葉の時期に約1km間隔ごとに写真撮影したことがある。バイクの振動を無視して撮りまくったので、鮮明な画像になっておらず、後で落胆したものだ。
写真② この小さなケヤキの芽がやがて巨木に!
五日市街道のばあい、路端に意図的に街路樹として植えられた例は意外に少なく、農家が防風林の一部として植え、それが街道から「仰ぎ見る」形で残されてきた例が多いように思う。街道に面しとびとびに植わっている区間が多いのだ。モミジとケヤキの紅葉の競演がもっとも美しいのが、立川飛行場があった砂川地区である(砂川闘争があった場所でもある)。農家の広い敷地に巨大なケヤキが2~3本がそびえ、モミジ、松、巨石なども配置され、実に見事な庭地が次々と並んでいた。
ケヤキの大木に圧倒されたのが、五日市街道に面した成蹊大学校庭である。植樹した年を示す立札もあった。「これなら、いつ来ても樹齢が分かる」と思ったもののメモしてこなかった。いずれにしても他所より太く、高くそびえていた。その本数は124本に及ぶ。ネットによれば「学校が池袋から移転した1924年(大正13年)に10~20年ものの苗木を植えた」とあるから、平成30年末で樹齢は植えてから90年近い。幹回り2メートルのものもある。その重量感を伴った緑や紅葉の風景は東京百景に選ばれ、武蔵野市指定天然杵物にもなっている。
問題はケヤキにも長短所がある。長所についてはこれまでに触れたが、短所については・・・枝が建物や電線に触れたり、広く張った根がコンクリートの路面を押し上げたりする。秋に沢山の落ち葉をふらし、風の時には小枝も落ちる。20~40メートルもの高さになる。20メートルと言えば8階建て、40メートルと言えば16階建てマンションの高さに相当する。枝を剪定するには人を高く持ち上げる重機が必要になるが、その限界は10メートルぐらいではないか。これ以上になれば剪定作業が不可能になる。つまり木の高さや茂り方をコントロールできなくなり、ますます天高く伸びる。
写真③ かなり強剪定したケヤキー費用25万円?
なお強剪定にはやや太い直径60センチほどの木で25万円もかかるそうだ。「邪魔だ」と根ごと引っこ抜くとなると、その廃棄処分代も含め100万円もかかると言う。住宅団地にケヤキがある場合、どこの管理組合も費用増加に頭を抱えることになる。街路樹のケヤキの場合、高さ10メートルほどで太い枝を切りそろえ(強剪定)、そこから出た新たな細枝に葉がつき、ヤナギのように垂れさがる姿に管理されている。「ケヤキの幽霊」とも言える姿でかわいそうであるが、公共事業費を増やさない苦渋の選択である。
写真④-やむおえず強剪定の街路樹。5本ほどの幹に揃え、そこから直接出た小枝に葉をつけさしている(入間市中心市街地)
環境保全に熱心な方は「ケヤキを残せ」「切るな」「強剪定するな」と言う意見に傾き勝ちである。だが、小さな苗を植えたときには予想できなかった大木に育つ.。寿命は150年とされ、どこまで高く・太くなるか分からない・・・とすれば、敷地の広い農家、公園、学校、公共施設ならOKの樹木だが、敷地が狭かったり、根が張る領域の狭い一般民家、立て込んだ団地、街路などにケヤキを植えるのは不適という認識を持つ必要がある。実際にこの認識を持たず間違って植えたばあい、行く行くコントロール不可能な樹高になる。このため①管理できる高さになるよう強剪定する、②枝が建物や電線に接触するばあい間引きする・・・と同時に、サクラ、モミジ、モクレン、ハナミズキなど高さの低い美しい樹木への転換を考えるのが妥当ではないか。
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