コロナの被害は恐ろしい。コロナによる病死もさることながら、経済的影響で自殺者が今後ますます増える傾向にあるからだ。
厚生労働者の自殺者統計結果の令和1年と2年を比較したものが表1と表2である。令和2年については10月までしか統計はないが、7~10月の増加傾向を直線で推定し、おおよその数値を推定しておいた。
自殺者は平成21年に年34,427人とピークを経験し、その後3年ほど横ばいに推移したあと、順次低下傾向をとり、令和1年には表1のとうり19,959人まで下がり、令和2年も6月までは減少をたどった。いずれにしろ、自殺は減少傾向にあったものが、急に令和2年7月から増加に転じたのだから、増加分は総て新型コロナがなんらかの原因とみて良い。
表―1 年自殺者実数の令和1・2年比較
月 |
令和1年 |
令和2年 |
2/1年% |
実数差 |
1 |
1,678 |
1,680 |
100.1 |
2 |
2 |
1,611 |
1,450 |
90.0 |
-161 |
3 |
1,841 |
1,748 |
94.9 |
-93 |
4 |
1,800 |
1,495 |
83.1 |
-305 |
5 |
1,840 |
1,575 |
85.6 |
-265 |
6 |
1,631 |
1,561 |
95.7 |
-70 |
7 |
1,780 |
1,840 |
103.4 |
60 |
8 |
1,577 |
1,889 |
119.8 |
312 |
9 |
1,645 |
1,828 |
111.1 |
183 |
10 |
1,510 |
2,153 |
142.6 |
643 |
11 |
1,574 |
|
推定 |
708 |
12 |
1,472 |
|
推定 |
862 |
合計 |
19,959 |
17,219 |
|
|
表―2 自殺者の男女比―令和2年
月 |
男子 |
女子 |
男子% |
女子% |
1 |
1,185 |
495 |
70.5 |
29.5 |
2 |
1,025 |
425 |
70.7 |
29.3 |
3 |
1,242 |
506 |
71.1 |
28.9 |
4 |
1,055 |
440 |
70.6 |
29.4 |
5 |
1,082 |
493 |
68.7 |
31.3 |
6 |
1,052 |
509 |
67.4 |
32.6 |
7 |
1,181 |
659 |
64.2 |
35.8 |
8 |
1,229 |
660 |
65.1 |
34.9 |
9 |
1,188 |
640 |
65.0 |
35.0 |
10 |
1,302 |
851 |
60.5 |
39.5 |
11 |
|
|
|
|
12 |
|
|
|
|
合計 |
11,541 |
5,678 |
67.0 |
33.0 |
コロナによる経営や家計の破壊は、医療関係者はもちろん三蜜対策を通じ、飲食業、イベント業、観光業、輸送業・・・と広範囲にわたり、景気の落ち込みを通じ失業者を生み、結局のところ全業種に及ぶ。自殺者は1~6月はまだ減少傾向にあるものが、7月以降増加に転じている。2月にコロナが発生し、一律1世帯10万円の給付金や、事業所への休業補償金、コロナ融資などで持ちこたえたものの、7月以降は経営や家庭の崩壊が明白になり、自殺者の急増になったと見る。
11月や12月は7~10月の傾向値の推定だが、令和2年7~12月の自殺者の前年対比の増加は2,768人ほどになる。これは11月29日現在のコロナ死者の2,109人の1.31倍である。だがこの計算は間違いである。1~6月で、自殺者は892人減っており、7~12月にも本来なら892人が減っていたところが、推定2,768人が増えたのであれば、両者をプラスした3,660人がコロナによる自殺者の増加という見方が正しい。コロナで精神的・経済的に力尽き命を絶った人が、コロナ死者の1.7倍になろうとしている。ことは深刻でコロナ抑制策と経済対策の両立が必須なのである。
なお自殺者の性別について見ると、令和1年には男女比が69.8%:30.2%だったものが、コロナの影響が出始めた令和2年7~10月では63.7%:36.3%となり、女子の比率が6%アップしており、母子家庭のパート雇用など経済的に厳しい女性の立場が、男性より早く自殺に追い込まれていると言えそうだ。