長野県で元・大學教授による執拗な「うるさい」という苦情で、公園が閉鎖された。この顛末は末尾に紹介するが、人間に限らず動物はコミュニケーションや自己表現のため声を発するもの。広い空間であれば、開放感や伝達のため声は自然と高くなる。自身が子供だった時代を考えれば、「声がうるさい」と言えないはず。声は音の1つだが、道路や鉄道、學校、音を出す工場の脇に居を構えた人は絶えず騒音になやまされていて逃げ場がない。太古の社会と異なり、文明社会ではお互い少々の音にたいして我慢を強いられるものだ・・・静寂をもとめられる睡眠時間は別である。
少子高齢化のため、住宅地最寄りの公園は、子供の声も聞こえないくらい、利用者が少ない場合がむしろ多い。利用者が少ないと、犯罪も増えやすく、安心して子供だけ公園に送り出せなくなる。このため、公園を人の集まりやすく、にぎやかな場にしていく努力が求められているのではないか。
公園には多様な目的がある・・・①「子供さんの遊び場」と限定した考えは、むしろ辞めるべきで、②若いママさんの公園デビュウの場、③若者のデートの場、④勤労世代が食事をしたり一休みする場、⑤高齢者が健康のため散歩や体操したり、対話を交わす場、さらには⑥世代を越え緑の環境を享受する場、⑦災害時の避難の場・・・といった側面も含め、「全世代利用型」を目標とし、利用者をいかに増やすかを考えるべきである。そして、一日様々な人が出入りし、たくさんの目が働ければ、それだけ子どもさんも若いママさんたちも安心して集える。
写真②⓷ 緑町中央公園の花のボランティア募集の花壇。懇談できる日陰の小屋
新所沢の緑町中央公園は広いタイプの公園だが、常時「花壇の手入をするボランティアの募集」がされ、奥行3.6×100mほどの花壇があり公募したボランチアが管理に当たっている。花壇の近くの日当たりには3×3mの木の腰掛台があり、さらに木陰に6~8人が座れる木のテーブルと椅子もある。そして花壇の管理に当たるボランティアの人を中心、中・高齢者が4~5人以上も寄り雑談しいる。10m四方はあると思われるコンクリートのミニ広場では15~20人もの人が太極拳の練習もしている。インコや烏骨鶏が変われた鳥小屋もあり、花壇だけでなく鳥を見に来る人もいる。これらのゾーンと隣接し、白の鉄製の柵で囲まれた砂場があり、このほかブランコ、滑り台など遊具がいくつかある。別途、コンサートも可能な広場もある。幼児~老人まで全世代が集える要素を持っている。
どこの公園にも4人掛けほどのベンチはあるが、横並びでは3~8人と言った対話はできない。緑町中央公園のように、真ん中に机を挟み対話のしやすいベンチの配置もぜひ取り入れるべきでしょう。
同じ所沢で1,650㎡ほどの小公園では、1段上がったところに砂場、ブランコ、滑り台などの幼児用遊具が集められ、一段下がった80%ほどのところが広場になり、子供さんが柔らかいボールを投げ、これをママさんが打つ・・・という光景も。また片隅にあるバスケットのゴールに、一人黙々と投げ入れる中学生の練習風景も見てきた。幼児や小学生が遊ぶ公園で、硬いボールの野球をしたり、ボスケットの試合をしたりするのは禁止すべきだが、あれもこれもダメ・・・の禁止規定の多い公園にしてはいけない。バスケットのボール入れだけなら25㎡もあれば練習はできるし、1ホールだけのゲートボールの練習場も設置できる。これから流行るだろうボッチャなどの球技も狭い場所で可能なはず。これらをすれば公園の利用層は増える。
写真④⑤ バスケットの練習用のゴール・・・1人で楽しめる。団地の公園でカードゲームに興じる中学生をみたことも。
高齢化社会という背景も考え、公園の全世代利用を促すことがたいせつなのではないか。私は分譲団地の公園ゾーンに接した棟に住んでいる。朝草むしりに出ると、遊具コーナーと離れたコンクリートの広場では、毎日ある高齢者が1人黙々と体操をしている。平日の放課後や土日には小・中学生が5人、10人と来てコンクリートの上でカード遊びをしたりスケボーもする。10mほどの四角に囲まれた小砂利のエリアがあり、ここを舞台にドッジボールを10人以上で楽しんでいることもある。砂利が枠外にとびちるが、これを枠内に箒で戻すのが私のささやかな仕事でもある。そして「うるさい」と感じたことは1回もない。
公園の利用法については、「あれもこれもだめ」ではなく、「こんなことはできないか」と逆に考え、多くのひとに喜ばれる工夫をすることが大切だと思う。
長野県で起きた公園閉鎖の顛末(公表記事)
長野駅から車で10分ほどの住宅地に、問題の青木島遊園地はある。青木島小学校、青木島保育園、青木島児童センターに囲まれた場所にある青木島遊園地は2004年に地区住民の要望を受け、農地だった場所を公園として整備した。長野市の公園緑地課が管轄となって公園を整備し、隣接する青木島児童センターや地域ボランティアによって雑草駆除などの管理を行なってきた。青木島児童センターの責任者はこう話す。 「児童センターは青木島遊園地ができたのと同時期に設立されました。保護者が就労していて自宅に不在の小学1、2年生を下校時間から保護者の仕事が終わるまでここで預かっています」 ところが公園ができてからしばらくして、公園付近に自宅があるひとりの男性から児童センターに苦情が入る。国立大学の教授(当時)を務めていたこの男性は、 「子供を迎えに来る保護者の車のエンジン音がうるさい」と主張したという。児童センターの関係者は言う。 「児童センターはこれを受け、駐車場に面した児童センターのガラスに、エンジンをかけっぱなしにしないよう張り紙をするなど対応しました。それでも『車のエンジン音がうるさい』という男性からの苦情の声は、変わらず児童センターや市の公園緑地課に寄せられました。市の公園緑地課はさらにそれを受けて、男性の自宅前にあった公園の入口を移動させ、自宅に近い場所で遊ばせないように植樹して子供の遊び場を限定、雲梯の位置も男性宅から遠い位置へと移動させるなど、さまざまな配慮をしました」 教授だった男性は昨年3月に国立大学を退職し、名誉教授となった。すると程なくして、今度は青木島児童センターに「子供の声がうるさい」と男性から注意があったという。児童センターの責任者が説明する。 「遊ばせ方を考えなさいという話でした。小学校低学年に、静かに遊ばせるというのは困難ですので、現在は屋内で遊ばせるようにし、外での遊びは小学校のグラウンドを放課後に借りるという形で対応することを考えています」 公園に隣接する住宅に住み、男性とも面識のある住民は困惑気味にこう話す。 「子供の声はしますが、それは夕方まででそれほど気になりません。男性は教授だからといって偉そうにするわけでもないし、地域の集まりにもちゃんと参加していました。酒席でも普通に話す人で、特に神経質な性格という感じもありません。威圧されるような感じもない。ただ教育者という立場なのに、なぜ子供に対して寛容な目で見られないのでしょうか……」 (この閉鎖された公園については、再開を願う署名運動もやられ、多数の署名が集まったようだ)